2018/01/17 14:12
当工場の家具の着色は草木染めの技法を応用して発色させています。
本来草木染めは布に施す事が多い染色方法ですが、自然本来の色に拘りたいと思い木を染色することを考えました。
〇草木染めとは?
草木染めは古来より行われてきた染色方法ですが、化学染料の登場により区別するため「草木染め」という言葉が生まれました。
草木染めは草木を煮出すことで染液を作り、それに布を浸します。
その後浸した布を媒染液というものに浸すことで色が発色し布に定着させる手法です。
一般的には藍染めがよく知られているのではないでしょうか。
草木の種類により様々な色を見せてくれますが、色味の強いものは少なくパステルカラーのような自然で柔らかな色が多いのが特徴です。
木材の染色には不向きな染料ですが、柿渋染めなどは日本で古くから木材の着色に使われており
日本家屋や黒塗りの塀などに使われてきました。
〇今なぜ草木染めなのか?
結論から言いますと、これ以上の「自然」な着色剤がなかったからです。
家具を製作する上で私達には明確なビジョンがありました。
それは「自然」であること。
世の中には非常に優れた塗料がたくさんあり、そのどれもが大きなメリットがありました。
安定性・手軽・豊富なカラーバリエーション・丈夫さなど
草木染めよりも優れた着色剤はたくさんありましたが、「自然」という観点だけに絞ると
これ以上に優れた着色方法はありませんでした。
〇木材に草木染めって実際どうなの?
では一般的な着色剤と比較すると具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
【メリット】
・有害物質を含まない自然素材
・自然で味のある独特な風合い
・木材の経年変化と合った経年変化
【デメリット】
・安定した発色が難しい
・ムラが出る
・色味が変化しやすい
・色の種類が少ない
化学染料を使わないため、安全性が高い代わりに不安定であり
自然で独特な風合いが、見かたによってはムラになり
経年変化するからこそ色味が変化しやすいと言えます。
〇当工場での染め
当工場の草木染めの多くは染料を使用せずに媒染液のみで発色させているため媒染染めと言うほうが正しいかもしれません。
もちろん染料を使うこともあるため、草木染めとして統一しています。
当工場では使用している秋田杉を最大限に生かすため、独自に媒染液を作り杉材に含まれるタンニンに反応させ発色させています。
これは木材に含まれるタンニン量や成分により発色具合が左右されるため、
木材の育った環境や部位によって濃淡の出方がまったく異なります。
まさに木材が持つそのものの色となり、一期一会の仕上がりと言えます。
また3ヵ月から1年ほどかけ少しずつ変化していき、木目と節が協調されて落ち着いた色へと変わっていきます。
上写真が色見本の一例です。
個体差が激しいため、必ず同じ色、濃淡になるわけではありませんがご参考にしてください。
〇まとめ
一般的な化学染料と比べ不安定な着色方法だと言えます。
色は変化する、発色は読めない、ムラが出る・・・と非常に気難しい着色です。
唯一の長所は「自然であること」この1点です。
ですが、その不安定さこそが唯一無二の1点モノとなり、木材それぞれの個性を大切にした仕上がりと言えるのではないでしょうか。
こうした変化や一期一会をお客様にも楽しんで頂けたらと思います。